溜息集積場 出張所

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映画「シルバニアファミリー フレアからのおくりもの」見てきました。

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というわけで

accumlater.hatenablog.com

こちらの記事で言及してからほぼ一月弱、ようやく映画シルバニアファミリーを見に行くことができました。
公開から間が経っているということで簡素にはなるかと思いますが、所感を書いていこうかと。

上で埋め込んだ記事でも書いた通り、本作を管理人が見に行こうと考えたのは監督が小中和哉電光超人グリッドマンから平成初期ウルトラシリーズ〜オーブオリジンサーガなど)、脚本が小林弘利(「ウルトラマンX」シリーズ構成のお一人、他ニュージェネウルトラやオーブオリジンサーガの印象的な回を多数執筆)という馴染み深い組み合わせだった件が何より大きく、それに加えて上映からしばらく経ったころ、他にもアドバイザーとして板野一郎監督(管理人が色々書くよりもうWikipediaでもいいのでご自分でお調べいただいた方が早いです)、ミニチュア美術監督三池敏夫監督平成ガメラシリーズ・シン・ゴジラ美術監督、「ウルトラマンサーガ」特技監督など)が入られている……という話も聞いていましたし、そのことに納得する内容でもあったのですが。
それらの事情を一旦全て考慮の外に置いてもなお、観に行ってよかったと思える内容でした。
以下、内容に言及していくため格納です。

シナリオ面に関して言うと、おおまかには「小さくも幸福な世界で過ごし、そのこと自体には不満のない少女が、それでも日々の生活の中で壁にぶつかった時、友人や大人たちや、外の世界を見てきた青年の話を聞くことでより良い答えを選んでいく話」という形でまとめられるものです。村全体を巻き込む大事件が起こるとかではなく、一つ一つは些細と言えば些細で、だからこそ主人公であるフレアが真剣に悩む姿がとても身近で普遍的に感じられる、そんな物語になっていました。
すごく意外なように思えて、見るに従って納得できたのが、フレアをはじめとした子供たちが利発かつ優秀で、自分達が抱えている問題を的確に捉えて真剣に向き合い、時に失敗をしてもその経験をしっかりとその後に活かせる、ということを密に密に描いていたところ。
これは同時に、失敗したことや危なかった時、大人たちが無責任に放置するのでもなければ、子供たちのことを心配こそすれ束縛したりもしない、彼らを信じる行動を取っていることで、大人たちが・村人たちがこういう生き方をしているからこそ子供たちはこれほどのびのびといられるのだな、と感じられた部分でした。こういう大人たちでありたい……とても難しいだろうということを踏まえてもだ……。
シルバニア村は世界で1番美しい場所」という、言葉だけでは描ききれない部分を確実に裏打ちする、そういう描き方に思えます。
(これ時期と見た順番が順番だったもので、どうしても某村を思い出してしまって仕方がなかったのですが、双方正反対の意味で「人間による普通の村」とは隔絶した存在なので引き合いに出すのはともかく比較するのはちょっと野暮が過ぎるかとも思います。止まる気配のない大ヒットおめでとうございます)

もう一つ好きだったのが、村を出て生活しながら、シルバニア村のこと自体は愛している青年・ハスキーの存在。
言動の所々から、村での生活「だけ」では彼の好奇心は満足できなかったらしい、という雰囲気を感じさせる一方、村のことを大切に思っていることも同時に見え、彼が世界の様々な場所や営みを見てきたこと(「雨が降ったら喜ぶ町だってある」という言葉から村の外へ想像を広げる子供たちの健全さ!)が、フレアの悩みや壁を乗り越えるヒントになる……という展開は、定番といえばその通りですが、その定番、定石を、小林氏と小中監督らしい丁寧さと温かさで描いた、安心できるものだったと感じます。
「ねじねじの木」の話から彼自身の生き方の話につながり、フレアが抱えていた悩みへの手がかりとなるあの流れが本当に良い。

副題である「フレアからのおくりもの」について、フレアから誰に贈りたいものであるのか、そしてそれが何を示すことになるのか……まで含め、とても暖かく、穏やかに「見に来て良かった」と思える映画でした。
これは完全に自分語りなのですが、管理人って生涯で初めて(感動して)泣いた映画って、映画館での鑑賞ではなくテレビで放送された「ウルトラマンティガ&ダイナ」なんです。特に、あの映画でダイナの危機にティガが現れること、それは「ダイゴが帰ってくることではない」けれど、『だからこそ』ウルトラマンティガという存在があの地球の人々にとってどれほど大切なものだったかを描ききったあの場面なんですね。もちろん当時ここまで言語化していたわけではないですけど……。
今回のシルバニアファミリー映画は、流石に「ティガ&ダイナ」とはジャンルも違えば方向性も違い、共通点を探す方が難しいぐらいなのですが、しかしその穏やかな語り口の中で描かれた本作のいくつかの場面から、小中監督によるあの作品と近い眼差しを感じられるような気がして、前述の通り激しいシーンではないにも関わらず、なんだか無性に泣けてくる機会がとても多かったです。もちろん小林氏が担当されたシナリオから受け取れるメッセージも「Xというシリーズに関わった人らしいものだ」と思うものでした。
「ティガ&ダイナ」は監督が小中監督、脚本が長谷川圭一先生による映画でした。およそ四半世紀経った今でもお二人がまだ現役で作品を発表されており、各々が参加された映画で同じ年に感動することになったのは、なんだか不思議な気分です。

本当はもう少し細かい話(ハスキー役のDAIGOに注目して見ていたらハスキーのお父さん役がまさかの杉田智和だった件とか、『木』が大きなモチーフになっていることとか、些細な場面での流体表現がすごく見事なこととか)も触れたくはあるのですが、この記事で書いてしまうとノイズになりすぎてしまうので今回は控えておきたいと思います。別記事か別所かそもそもやれるかどうか……。

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実際に観に行くまでちょっと時間がかかりすぎてしまい、早いところでは上映終了や、かかっている映画館でも一日1回上映の場所が増えてきているようですが、少しハードな映画が(管理人が主に見るタイプの作品群では特に……)多かった今年、年の瀬近くにこれほど穏やかで、しかし強く希望を描いた作品を見るというのもいいんじゃないかな、と素直に思える作品でした。冒頭で書いたスタッフの皆さんに興味を覚えた方はそんな入り口からでも、これから都合を合わせて見ていただけたら嬉しく思います。